生レバーとユッケよ、君たちはなぜ姿を消したのか

旅行

べちこ:「ねえ、そもそもなんで日本では生レバーとユッケって食べられなくなったの?」

べち:「ほんまやな。私も生肉食えなくなったって聞いた時は膝の皿割れるほど崩れ落ちたわ。でもね、それにはちゃんと理由があるんよね。一緒にひもといてみよっか。」


「令和生まれにとっては都市伝説」な、生レバーの時代

あの頃の焼肉屋って、ほんとに夢があった。
煙もくもくの店内に、ジュウウウって肉が焼ける音。そして、最初に頼むのは「生もの」って、決まってた。
ユッケ、生センマイ、生レバー。

口に入れた瞬間、とろけるようなあの幸福感。生レバーなんて、ほとんどフォアグラよ。

でも、それがなぜかぱたりと、ある日メニューから消えた。
「え?今日は品切れ?」
「いや、もうウチではやってないんですよ…」

全国の焼肉ラバーたちが、絶望したあの夏。2011年のことでした。


あの日、なにが起きたのか

ユッケで死者が出た。しかも複数。

2011年4月、富山県と福井県の焼肉チェーン「焼肉酒家えびす」で提供されたユッケが原因で、O157による食中毒が発生。
その結果、5人が死亡し、100人以上が重症化しました。

この事故、ただの「食中毒」では片づけられなかった。

・被害者が子ども含めて広範囲に及んだ
・原因とされた肉が「食用として提供してはいけない部位だった」
・しかも、安全基準に適した処理がされていなかった

ということで、日本中に衝撃が走りました。


そして、生レバーにまで飛び火

ユッケだけじゃなかった。
その流れで「生レバー」も、「あれ?あいつも危なくない?」ってことで、厚生労働省が調査に乗り出した。

調べてみたら、牛レバーにはそもそもO157やカンピロバクターが常在していることがあることが判明。

そりゃヤバい。
しかもレバーって、中まで火が通りにくい。
「表面を炙ったらOK!」って、そりゃ気休めにもならなかった。

そして、2012年7月1日。
厚生労働省は、牛レバーの生食を食品衛生法で禁止に踏み切ったのです。


じゃあ、ユッケも完全に禁止?

実はね、ユッケ自体は「全面禁止」じゃないんです。
ちゃんとルールを守っていれば、提供できる。

でもそのルールが……鬼みたいに厳しい。

・肉の表面を削り取る(表面には菌がついてるかもしれない)
・専用の加工場で処理されてること
・使用する器具も別で、交差汚染がないように管理されてること

結果、対応できる焼肉屋がほとんどいなくなった。

そう、「コストと手間がえげつない」のよ。


生レバーの代替品?ナンチャッテレバーの登場

生レバーが消えたあと、出てきたのが「コンニャクで作ったレバ刺し」や「加熱後冷却のなんちゃってユッケ」。

筆者もね、試してみたけど……うーん、正直、違う。

「これはこれでアリだけど、あの頃の味じゃないな〜」
っていう、やさぐれた気持ちが残る。

でも、しょうがないのよね。
あのときの犠牲が、あまりにも大きかったから。


実は韓国では今も食べられている

ちなみに、お隣の韓国ではユッケも生レバーも今も健在
生肉専門店なんてのもある。

ただ、そこは国民のリスク許容度の違い。
「自分の責任で食べる」という意識が根づいてる文化が背景にある。

日本だと「お店が出してるから安全なはず」って思っちゃう人が多い。
だから、国がルールで縛らざるを得なかったのかもしれない。


最後に、筆者の小さな後悔

実は私、2010~2015年ごろは絶賛アメリカに留学中で、日本にも全然帰らなかった。
だから帰国した時にはもう日本で生のレバーやユッケを味わうことができなかった。

事前に知ってれば帰ってたか?と言われると費用対効果が悪すぎて帰国はしなかったとは思うけど、韓国で生レバーを食べるたびに、思い出してちょっぴり後悔している。


まとめ:生肉文化よ、またいつか安全に出会える日まで

生レバーもユッケも、あのころは当たり前にあった。でも今は、過去のもの。

でも、悲しいだけじゃない。
今の焼肉屋さんたちは、その代わりに「超低温調理のレアステーキ」や「とろけるタタキ風ロース」なんて、創意工夫で新しい幸せをくれてる。

リスクと、味と、安全と。
そのバランスを見極めながら、私たちは焼肉と向き合っていくのです。


というわけで、今日も焼肉は美味いし、明日もたぶん美味い。
でもあの頃のユッケとレバーの味は、心の中でだけ、永久保存。

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